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代表インタビュー
代表取締役 丸谷 元人(Hajime Marutani)
オーストラリア国立大学卒業、同大学院修士課程中退(アジア安全保障)。
南太平洋・中東およびアフリカにおいて駐在員やVIPの身辺警護、テロ対策、不法監禁・脅迫事案対応、地元政府および部族との交渉、武装勢力やマフィア、地元労働組合への犯罪予防と情報収集・監視・宣撫活動、および地域の政治・治安動向分析等を行う。
その後、米海兵隊での訓練(近接戦闘、格闘・逮捕術、暴動鎮圧、犯罪基本捜査課程)、英国における誘拐人質事案初動対処(K&R First Responder)訓練、ならびに米民間軍事会社における対テロ戦闘・戦術射撃・市街地戦闘・要人警護・追跡監視訓練などを修了し、インストラクター資格を取得。また米系大手IT企業のリスク管理部部長(日本・韓国地域担当)、Googleにおける地域統括セキュリティ・マネージャー(日本・韓国・豪州・NZ担当)などを歴任、情報漏洩・産業スパイ対策も担当。
週刊プレジデント、Voice、プレジデントOnline、正論、クーリエ・ジャポンなどに多数寄稿。また、防衛省・陸上自衛隊への訓練支援や、防衛者および「危機管理産業展2019」などにおいて安全管理に関する講演を行う。
著書に『The Path of Infinite Sorrow』(豪Allen & Unwin社)、『「イスラム国」はなぜ日本人を殺したのか』(PHP研究所)、『日本の南洋戦略』(ハート出版)などがある。(一社)日本戦略研究フォーラム政策提言委員。
- 危機管理の道を目指したきっかけ
間違いなく、1989年の天安門事件ですね。当時14歳だった私は、事件の10か月前に中国を訪れ、民主化運動を行っていた学生たちと交流し、その後も文通を続けていました。しかし、天安門事件で彼らがいなくなり、日本で伝えられる情報と、現地の実情が全然違うということに気付いたことで、国際社会や政治の恐ろしさを認識するきっかけとなり、「何とかして守れないか」という考えが芽生えたんです。
その後、日本国内での報道を見てもわからないことが多く、「これはもう海外に出るしかない」ということで、海外に出る決意をしました。その中で、東南アジアやオーストラリアなどでの交流を通じて、「日本国内における言語空間とか情報空間とか認知空間は極めて狭いんじゃないか」ということに気づきまして、これでは国際競争に勝てないと危惧しました。
そして、日本の経済が低迷し始めた90年代に、「日本に欠けているものは危機管理なんじゃないか」と強く思うようになりました。
- 日本ではなくパプアニューギニアで就職した理由
大学院時代、パプアニューギニアで開催された国際会議の通訳として参加したのがきっかけです。その会議は第二次世界大戦中の日本軍とオーストラリア軍の戦いに関するもので、そこで防衛大学校の教授の通訳として現地調査に同行しました。日本に帰国後は都内の商社への就職が決まっていたんですが、日本では全く伝えられていない世界や現地での経験に打ちのめされ、日本の商社には就職をせずにパプアニューギニアに留まる決意をしました。
パプアニューギニアは非常に治安が悪い国ですので、まずは人々が安心して動けるようにタクシー会社を設立したり、他には日本企業と協力してフルーツジュースの生産工場を作るなどの事業を展開したりしました。さらには、地元の州知事や大臣クラスのコンサルタントとしても活動しました。
- ナイジェリアでの経験
ナイジェリアでは、世界最大の肥料工事の建設プロジェクトのセキュリティ責任者を務めました。2013年1月のアルジェリア人質事件の約8か月後で、英語力や武器の知識、多部族国家での交渉経験が評価されての任命でした。
現地で何をしたかと言いますと、ナイジェリアでは民兵/マフィア/海賊/国際テロ組織ボコ・ハラムなどが活動しており、毎年多くの人が犠牲になっていましたので、セキュリティ責任者として、警備、テロ対策、情報収集、犯罪予防に取り組みました。時にはマフィアと交渉し、情報を得るための戦略を練るなど、多岐にわたる業務をこなしていました。
- 日本へ帰国後の活動
日本に帰国後は、出版社とご縁がありまして、数冊の本を出版させていただき、ビジネス雑誌や政治オピニオン誌に記事を執筆しました。その延長で、日本戦略研究フォーラムの政策提言委員として活動させていただき、シンクタンクに関与した後、アメリカの大手IT企業でセキュリティ担当や危機管理、リスク管理の責任者を務めました。
- 米海兵隊や民間軍事会社での経験
米海兵隊では、近接戦闘や犯罪発生時の初動対応訓練を受けました。
民間軍事会社では、対テロ戦闘、身辺警護、戦術射撃などの訓練を受講して、イギリス・ロンドンでは身代金目的の誘拐対策訓練を計3回受け、ロイズ保険関係者と共にホテルに缶詰状態で様々なシナリオベースの訓練を行いました。
- なぜ世界各国の現場へ赴くのか?
やっぱり、その現場を見ないと分からないことが多いんです。日本企業をたくさん見させていただいて感じたことが、「東京とか日本の常識で考えてしまって判断しがち」で、それが致命的なミスにつながることがありますので、現場を知ることが重要なんです。
それに、日本の報道とか情報空間/言語空間/認知空間がかなり狭いですので、現場に行かないと実態が理解できません。大規模なテロ事件や紛争地域を訪れ、新聞やテレビなどでは絶対わからないような現地での距離感や、実際の状況を体感して、「なぜ起きているのか」「なぜ日本で報道されないのか」を自分で確認するために、世界各地を巡っています。
- パプアニューギニア、ナイジェリア、外資系企業と、危機管理のキャリアを歩んだ丸谷元人のあり方に大きな影響を与えたと思われる出来事、出会いについて
一番最初に影響を受けた出来事は、まずは天安門事件で失った大学生の友人たちです。また、オーストラリアで出会った親友の中国人は、文化大革命で迫害されオーストラリアに逃れた家庭の出身で、彼からも多くを学びました。パプアニューギニアでは、オーストリア国籍の現地華僑の一族や、山の中の部族の人たちとの交流がありました。ナイジェリアでも、現地の政府機関や警察の人々から多くを学びました。さらに、紛争地帯で働くエンジニアリング会社の先輩や、各国の軍人や情報機関関係者との出会いでいろんなことを学ばせていただいたことも、非常に重要な経験だったと思います。
- 危機管理に必要な心構えとは?
「誰も考えたくないような事態を考え、それに備えること」ですね。多くの人が一つの方向に集中している時に、異なる視点から何が起きるかを想定することが重要で、情報を鵜呑みにせず、その背後にある意図や理由を考える「天の邪鬼的な観点」を持つ必要があります。
次に、危機に対しては「大きく構えて小さく収める姿勢」が大切で、最初に大きなリスクを想定し、その後具体的に対応することが効果的なんですね。「悲観的に準備して楽観的に対処する」という考え方が基本です。
さらには、「自らを助ける者を助く」という姿勢も重要ですね。政府や大使館ができることは限られていますから、頼りすぎず、自社の危機は自社で守るという意識を持つことが必要です。普段から考えたくないことを、経営トップがしっかり考えて備えておくということが重要なんです。
- アルファ・リードが考える「危機管理」とは?
とにかくですね、危機管理体制を導入した企業様にとって、「儲かる仕組み」なんだということ。これをまずお伝えしたい。有事が発生した際、被害に対応する準備と心構えとシステムができていれば、あとはいち早く回復していくだけなんです。迅速に対応し被害を最小限に抑えることで、競合他社がもたもたしてる間に、自社はどんどん伸びていくということになります。
それに、普段から準備をしていますと、社員やその家族にとっては安心感が格段に違うわけで、もちろん離職率の低下にも寄与します。
また、危機管理体制と同時に大切なのが情報です。危機管理体制と情報収集の両方が揃えば、企業はリスクに対処しながら新たなビジネスチャンスを掴めます。暗闇の中で、ライトの役割となって照らしてくれるのが情報であり、リスク情報ですし、それを元にして、転んでしまった時にどうするかってことを考え準備しておくのが危機管理だということなんですね。
恐怖や不安に駆られて行動を躊躇するのではなく、正確な情報と備えがあれば、「取るべきリスク」と「避けるべきリスク」を見極めて、リスクを乗り越えて大きな利益を得ることができます。危機管理は単なるリスク対応ではなく、「企業の成長と利益を促進するための戦略的な仕組みである」ということをお伝えしたいです。
- アルファ・リードでは、危機管理を通じてどのような価値提供をしているのか?
まずは企業の経営トップの皆さんに、普段考えてないことを考えてもらいます。
最初に言いました通り、危機のことってあんまり考えたくないことですので、これをチャンスに考えていただき、「なぜこれをしなきゃいけないのか」「企業の哲学として、なぜ体制をしっかりしなきゃいけないのか」ということを考えていただきます。
その後に、実際にリアルなシナリオ演習を体験していただくと、準備不足がどれだけの混乱を生み出すのかとか、どれだけの被害を不必要に生み出してしまうのかがよくわかるんです。
そのリアルな体感を記憶した状態で、自社の危機管理体制構築をしっかりとやっていただくと、実はそこまで大掛かりなものはいらなかったり、社内にあるリソースで十分だということがわかってきます。それを使ってどういう対応ができるかということは、それぞれ自社でできてしまうんです。危機管理体制を作った後に見える世界は、以前とは全く違ってきます。つまり会社の競争力とか理解力が増すということです。
なかなか海外ビジネスがうまくいかないなと悩んでる日本企業は多いと思うんですが、やっぱり理由は2つ。
危機管理体制がちゃんとできてないこと。それから、国際感覚や情報をちゃんと持っていないので国際感覚が欠如していること。
この危機管理体制さえしっかりやっておけば、国内外のビジネスにおいて何が必要なのか、そしてどうやったら勝ち抜いていけるのかということが、自然と分かってきます。そういう非常にいい仕組みなんだということをお伝えしたいです。
- アルファ・リードの社訓:「進取果敢」「熟慮断行」「臨機応変」
我々はリスク情報をいち早く入手して、それに対応する体制を構築することが仕事ですので、危険とか変化とかをいち早く捉えて分析した上で行動に移すことが大切です。
ただ、情報や情勢というのは変わったりしますから、変わってしまった時に、臨機応変に柔軟に修正していく、そういった姿勢が求められると思っています。
- 危機管理には非常に多くの能力が求められるが、アルファ・リードの社員に必要なことは何か?
企業であるお客様、そしてそこにいらっしゃる社員とかご家族の安全を守る仕事を通じて、国や社会の発展に貢献をしたいと思える人ですね。
そして、柔軟、かつ、情報に対する感度が高い人じゃないと難しいかなと思います。
また、小さな会社でありますので、我々も互いに支え合い、他が足りない部分を自ら率先して補うという垣根を越えた助け合いができる人が多いです。
その上で、語学力があればなお素晴らしいですし、他のいろんな分野の業務経験があれば、それを活かしながらいろんな企業さんに対するサービスに活かしていくことができると思います。
- 若い人材に期待することは?
まずは、日本語以外の言語を最低1つは習得してほしいですね。やっぱり、英語の世界で見える情報量と、日本語の情報量が、格段の差がありますので、英語が出来ることは非常に重要だと思います。
一方で英語は、ベースとなる日本語の能力の上にしかできないので、まずは日本語というベースをしっかりと持った上で、英語や違う言語を勉強すると。
次に、自らの体で海外にどんどん出ていってほしいです。それこそ異文化とか民族とか別の宗教とか別の生活習慣を持ってる人たちと、とことん付き合って、「なぜ彼らがこういう環境の中でこういう生活をして、こういう考え方をするんだろうか」「なぜこういう行動をするんだろうか」ということを、彼らの立場で考えてみる。この理解がなければ、国際的な問題や紛争について単なる感情的な反応で終わってしまいます。ですから、そういった経験をたくさんしていただきたいなと思います。
最後に、食事も極めて大事ですね。いろんな国に行って、現地の料理を食べて、「美味しい、ありがとう」と言うと、現地の人はすごく喜ぶんです。「昔の兵隊さんもそうだったけど、我々と同じものを同じように手を使って一緒に食べてくれる」と。
パプアの言葉で、「ワンテムカイカイ」という言葉があります。(ワンテム(ワンタイム)=一緒に)(カイカイ=食べる)一緒に食べることによって、家族意識とか仲間意識が生まれ、いろんな国の人たちに助けられましたし、多くのことを学ぶことができました。
そういった経験が若い人材の成長と国際的な視野を広げ、将来のリーダーシップに貢献するものと考えています。
- 「今後のビジョン」アルファ・リードが目指すべき姿について
縁の下の力持ちとして、企業危機管理体制の構築を支援し、かつ、 日本のテレビや新聞を100年見続けても絶対得られないようなレベルの情報を皆さんに提供することによって、再び、日本という国に競争力を付けさせて、さらに若い人たちに再び夢や誇りを与えられるような国作りをする、そのお手伝いをしていきたいと思っております。
当社のロゴは
なぜ「フクロウ」?
当社のロゴであるフクロウは、その平べったい顔を使って周囲の小さな音を集約し、「左右非対称の耳」を持つことで、別の角度からの音源の位置を正確に聞き分けています。
また、人間の10倍から100倍とも言われるその優れた視力と、音をほとんど立てないスムーズな飛行で、夜の暗闇でも素早く移動することができます。さらに、ほぼ全方向に回転できる首を使うことで、死角に潜んだリスクも発見することができます。こんなフクロウが持つ優れた能力こそ、私たちリスク管理、危機管理、およびセキュリティのプロフェッショナルが目指す理想像です。
さらに、ギリシャ神話の女神として「知恵」や「戦略」を司り、「都市の守護女神」とも呼ばれているアテナは、常にフクロウを連れていますし、「不苦労」という当て字もある通り、日本でも古代からフクロウは「幸運」と「商売繁盛」をもたらす鳥としても信仰を集めてきました。
私たちは、そんなフクロウが持つ能力にあやかりつつ、そこから得た「知恵」と「戦略」をお客様と共有し、「幸運」を得ることによる「商売繁盛」のお手伝いをしたいと願っております。